尿酸排泄のメカニズム

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知っておきたい腎臓の機能

 尿酸の合成は主に肝臓で行われ、その大部分が腎臓を経て尿中に、残り一部分は消化管から便中に排泄されます。高尿酸血症の原因のうち8割以上に尿酸の排泄低下が関係しています。これについて消化管が問題となることはまずなく、尿酸の排泄低下の原因はもっぱら腎臓の尿酸処理の異常から生じます。このように腎機能の異常は高尿酸血症や痛風の原因となりますが、逆に、痛風腎のように高尿酸血症や痛風の結果として腎臓が侵されることもあり、どちらが原因でどちらが結果か判断に苦しむような例もあります。

ここでは高尿酸血症や痛風を理解するうえで欠かせない腎臓のメカニズムについて考えてみましょう。

jinzo.jpg体内濃度を調節するネフロン

 腎臓は私たちのちょうど腰あたりに左右対称に一対あります。握りこぶしぐらいの大きさで、そら豆のような形をしています。表面から内側に向かって皮質、髄質、腎杯、腎盂などの部分からなっていて、腎動脈、腎静脈、尿管の3つの管が通っています。動脈を通って老廃物や不要な水分を運んできた血液は、糸球体という濾過装置を通る間に浄化され、静脈から心臓に戻ります。濾過された物質は水とともに尿となり、尿管から膀胱へ運ばれて体外に排泄されます。

 顕微鏡を使ってさらに細かく腎臓の構造を見てみましょう。丸い玉のような形をした毛細血管からなる糸球体と、それに続く尿細管という部分が一つの構成単位となって集合管に注いでいます。この基本となる構成単位をネフロンといい、腎臓は左右合わせて約200万個のネフロンから出来ています。

 ネフロンではまず糸球体で血液の大雑把な濾過を行います。そして、尿細管でその中から必要あるいは再利用すべきと思われるものを再吸収して血液中に戻します。その過程でその再利用される物質の血中濃度の調節が行われ、不要と判断された部分が再び捨てられます。このようにして腎臓はそれぞれの物質が体内に増えすぎたり不足したりするのを防いでいます。

 どの段階でどれだけの割合を捨てたり拾ったりするかは、処理される物質によって違ってきます。尿酸についてみると、正常人の場合には血液中を運ばれてきた尿酸は、まず糸球体で100%濾過されます。そして近位尿細管でそのほぼ100%が再吸収され、近位尿細管から遠位尿細管、さらに集合管までの部分で分泌(再排泄)、分泌後再吸収といった複雑な処理が行われ、つまりネフロンを出たり入ったりしながら、結局濾過された尿酸の約10%が尿中に排泄されます。こうしたことが繰り返された結果、1日に尿中に排泄される尿酸の平均的な量が約700mgというわけです。

 尿酸の排泄低下が起こるのは、尿細管での分泌(再排泄)が少なすぎるか、尿細管での分泌後再吸収が多すぎるかの2つの場合が考えられています。

 以上、述べたような尿酸排泄のメカニズムを知っておくことは、服用する薬や一緒に服用してはいけない薬の意味を理解するうえで重要です。

0403.jpg高尿酸血症の人は痛風患者の5~10倍もいます

 痛風の原因が体内の尿酸の増え過ぎによるもの、すなわち高尿酸血症にあることはご理解頂けると思います。それでは高尿酸血症の人は全て痛風になってしますのでしょうか。
そうではありません。実際には高尿酸血症の人の一部にしか痛風発作は起こりません。高尿酸血症でありながら痛風発作が現れない人のことを無症候性高尿酸血症といいます。無症候性高尿酸血症の人は痛風の予備軍といった存在で、痛風患者の5~10倍はいると言われいます。

 人によって発作が起こるか起こらないかは、尿酸値の高さの程度や高尿酸血症がどのくらいの期間が続いているかといった、条件の他に、体質の問題や環境的な要因も関係してきます。普通は関節炎発作の起こる人でも高尿酸血症になってから関節炎の症状があらわれるまでには10年ぐらいはかかると言われています。なお、一旦痛風ないし高尿酸血症になってしまうと、以後はどんなに食生活を節制しても尿酸値は正常に戻ることはありません。

 同じ高尿酸血症でありながら、あの痛い痛風発作に見舞われる人とそうでない人がいるのは不公平のようですが、これも悪いことばかりではありません。関節炎発作の自覚症状があったために初めて高尿酸血症高尿酸血症をはじめその他の異常に気が付いた人も多いものです。また発作がきちんとおさまっているかどうかも、高尿酸血症に対する正しい治療かおこなわれているかどうかを知る目安になってくれます。発見が早かったためにその分長生きしている人も多いのです。一方、無症候性高尿酸血症の人は、症状が現れないといいっても体内の尿酸が多すぎる事実には変わりがなく、身体の色々な場所に尿酸の結晶が沈着します。発作を経験しない分、発見が遅れ、気づいたときには腎障害がかなり進んでいたということも少なくありません。このように自覚症状があまりなく腎障害が関節炎に移行するタイプは痛風患者の半数近くはあると言いますから油断はできません。

 そこで、最近では集団検診や人間ドックなどで尿酸値を必ず調べるようになりました。

高尿酸血症の殆どは原因不明です

 さて、高尿酸血症には原因のはっきりしている場合(続発性)と原因不明の場合(原発性)があります。原因のわかっているものには、大きく分けて①白血病、多血症、骨髄腫などの病気がある場合、②腎臓病(慢性腎不全)がある場合、③アスピリンや高圧利尿薬(高血圧の薬の一種)などの薬を服用している場合の3つがあります。

 このうち、身近な例として注意が必要なのは③の高圧利尿薬などの使用についいてです。高圧利尿薬には尿酸の排泄を抑制し血液中の尿酸値を上げる働きがります。高尿酸血症になりやすい人はもともと血圧の高い人が多いのですが、降圧薬にも他に色々と優れたものがあるので慎重に選択をすれば問題は起こりません。

 しかし、このように原因のはっきりした続発性の高尿酸血症は全体の数%に過ぎず、残る大部分が原因のわからない原発性高尿酸血症です。そして、痛風発作以外の腎障害など痛風に関連する諸症状を発症する危険性については続発性・原発性に区別はありませんが、痛風発作が起こるのはなぜか原発性の高尿酸血症の人だけに限られています。

増えた尿酸の結晶化で症状が起きます

 尿酸という物質は非常に溶けにくい、すなわち結晶化しやすいという特徴を持っています。体内の尿酸プールが増えて血液中の尿酸値が上昇すると、血液に溶けきらない尿酸が体のあちこちで結晶化し、沈着します。痛風の色々な症状は、こうした尿酸の結晶化によって起こります。痛風発作や痛風結節はもちろんその代表的な例ですが、痛風発作のあの激しい関節痛にはじつは尿酸だけでなく、血液中の白血球が重要な役割を演じています。

hakkekyu.jpg 白血球が、体の中に侵入した細菌などの異物を食べて排除する働きをしていることは、ご存知だと思います。これは白血球のなかでも多くを占める好中球というものが担当しているのですが、この好中球が何らかのきっかけで関節の内側に結晶化した尿酸(正確には尿酸化ナトリウムの結晶)を異物と認識し、食べ始めます。いったん食べ始めると白血球は攻撃のかたわら応援を求める物質を放出し、それをかぎつけた他の白血球が周りからどんどん加勢に集まり、尿酸結晶との間に戦争が始まります。白血球は、尿酸の結晶の処理をしつつ、自らも戦いに疲れ、分解し、使命を終えます。この分解の過程で局所に炎症反応を起こす物質が放出され、激痛、腫れ、熱感、発赤を伴う関節炎が発症するのです。この時の様子を顕微鏡で見ると、針のような形をした尿酸の結晶を白血球が自らの中に取り込んで溶かそうとしているのがわかります。

 痛風発作の特効薬にコルヒチンという薬があります。発作の初期の段階でこれを服用すると、関節炎の症状を抑えるのに非常に効果があります。この薬が痛風性関節炎に効くのは、白血球の異物を食べようとする働き(貪食能)、及び他所にいる白血球が応援に駆け付けようとする働き(遊走能)、さらには炎症を起こす物質を放出する働きなどを抑えるからです。このコルヒチンは痛風発作だけに効くことから、コルヒチンが効いたか否かは痛風かどうかを判断する有力な手掛かりになります。

尿酸は核酸の代謝産物です

 生物は、いつも一定の状態を保持しているように見えても、実は絶えず外科医と部分的に物質の交換を行っています。つまり常に何かを鳩首し、排泄しているわけです。この過程で起こる化学変化を代謝と言います。また、化学変化の結果生まれた物質を代謝産物と言います。

 一方、獣鳥魚肉などの動物性食品はいくつもの細胞から出来ており、細胞の中には遺伝子情報の担い手である核酸という物質があります。核酸にはリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の2種類があります。核酸を構成している物質の中にはプリン体というものがあり、これこそ尿酸のもとのなる物質です。動物性食品などを食べると、食品に含まれていたプリン体が消化・吸収されてエネルギーとして燃やされます。その結果できる燃えカスが尿酸です。つまりは尿酸はプリン体の代謝産物ということになります。また、プリン体は人体内の細胞にも含まれていますから、細胞の新陳代謝によっても尿酸は生成されます。そして、食品中に含まれるプリン体を外因性、自己の体内にあるプリン体を内因性のプリン体と言います。尿酸自体は体の中で何かの役に立っている可能性は少なく、体外に排泄される運命にあります。

00004.jpg酸性過剰あるいは排泄低下で尿酸が増える

さて、尿酸はどんどん体外に捨てられますが、捨てるそばから作られているわけですから、体内には常に一定量の尿酸がたまっています。普通体内には1200mg位の尿酸があります。そして1200mgのうち、900~1000mg位が毎日入れ替わっています。毎日作られる尿酸のうち約700mgが体内で合成されている内因性の尿酸で、残りの200~300mgが食品に含まれるプリン体に由来する外因性の尿酸です。また、排泄される尿酸のうち大部分の66%~75%が尿中に、残りの33%~25%は便中に排泄されます。

 体内に一時的に蓄えられる1200mgの尿酸をプールの水にたとえてみましょう。この尿酸プールではいつも給水と排水のバランスがよく行われていますので水量は一定に保たれます。ところが、何かの理由でこのバランスが崩れると、プールの水量は増えたり減ったりします。水量すなわち尿酸が減る分には構わないのですが、増えるのは困りものです。増える、すなわち血液中の尿酸値が上昇すると、痛風の原因である高尿酸血症になってしまうからです。

 尿酸プールが増える理由としては、給水が増える場合(過剰産生型)、および排水が減る場合(排泄低下型)、両者の合わさった場合(混合型)の3通りがあります。高尿酸血症の人のうち過剰酸性型は2割以下と少なく、排泄低下型と混合型が多数を占めています。

痛風は全身病です

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関節炎発作以外の痛風の症状

 痛風は独特な関節炎症状を特徴としますが、腎障害(痛風腎)、腎結石、高血圧症、高脂血症、虚血性心疾患、糖尿病、肥満症などいくつもの症状を合わせ持つ全身性の病気です。関節炎のほかに一つの症状を持つだけの患者もいれば、すべての症状をもつ人まで様々です。ここでは、関節炎発作以外の痛風の症状を見ていきます。それぞれが一つの病気として治療の対象となっているような手ごわい症状が多いのですが、詳細はそれぞれの病気の専門書にゆずるとしまして、概略を述べさせて頂きます。

 まずなんといっても痛風患者に多いのは腎障害(痛風腎)です。血液中の尿酸が耳や関節に沈着して痛風結節が出来ることは、もう述べましたが、同様に腎臓に尿酸が沈着すると腎機能に障害が起きます。これを痛風腎と呼びます。痛風腎は進行すると腎不全から尿毒症に至り、、死をもたらす恐ろしい病状です。痛風患者の死亡原因のトップが尿毒症で、約4割の人が亡くなっています。痛風腎はかなり重症化するまで自覚症状がありません。しかし、痛風発作に見舞われても、よほど進行した場合は例外としてそのときから高尿酸血症に対する正しい治療を継続すれば、痛風腎はほぼ100%その発症もしくは進行を阻止できるのです。痛風患者にはこの点をしっかりと頭に入れてほしいものです。そうすれば、痛風患者が尿毒症で亡くなるような事態は避けられるのです。ただし、痛風発作を経験せずに腎障害が進行するタイプの痛風患者では、異常の発見が遅れることもありますので要注意です。

また、腎結石も痛風患者によく見られる病気です。尿の通り道に医師が出来、尿の通りが悪くなるもので、放っておくとやはり腎臓を傷めます。原因は、痛風患者に多い酸性尿や、尿の中の尿酸が多いためです。自覚症状の現れない場合と、腰や下腹部に痛み(せん痛)を覚えたり、血尿が出る場合もあります。

痛風患者には多くの成人病が同居しています

 痛風患者の腎障害は、優れた治療薬が開発された現在においてはほぼ100%コントロールが可能となっていますので、痛風の正しい治療を継続すれば恐れるに足りません。しかし、痛風腎の他にも、いわゆる成人病と呼ばれる多くの病気が痛風患者には認められます。今後は死亡原因の上位に上がってくるであろうこれらの関連疾患の克服が課題となりそうです。

 高血圧症や高脂血症はそうした病気のひとつです。高脂血症というのは血液中のコレステロールや中性脂肪が増加する病気で、高血圧症とともに動脈硬化を促進し、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳血管障害(脳卒中など)の原因になります。これからの痛風患者においては予防が可能な尿毒症が減り、その結果、死亡原因のトップを占めるのは虚血性心疾患、次いで悪性新生物(ガン)または脳血管障害の順になるであろうと思われます。

 糖尿病も痛風患者に多い病気です。糖尿病は重症化すると色々な合併症を引き起こすやっかいな病気で、動脈硬化を促進したり、腎機能を傷害したり、神経をやられたり失明を招いたりします。

 また、痛風患者には肥満症が多いことも忘れてはいけません。ところで、肝障害と痛風とは直接の因果関係はありませんが、痛風患者に大酒家が多いことから、肝機能障害を認める場合が少なくありません。

00003.jpg突然、激痛が襲う、痛風発作

 痛風発作(痛風性関節炎)が激しい痛みを伴うことは、もうみなさんはお分かりだと思います。ではその症状について患者さんに聞いてみましょう。

痛風患者Aさん「あれは出張中のことでした。晩に近所の居酒屋さんでモツを肴にビールを飲み、ホテルに戻って床についた時までは何ともありませんでした。ところが、夜中に左足の親指の付け根が痛くて目が覚めた。"おかしいな"と思いながらも酔いと眠気でうとうとしていると、明け方になって、今度は激痛で完全に目が覚めてしまった。なにしろ痛いんです。見ると、左足の親指の付け根が真っ赤に腫れて熱をもっている。夜が明けたが、仕事どころではありません。訪問先に電話をしようと思いましたが、ベッドから起き上がって受話器をとるのに一苦労。その日は、トイレに死ぬ思いで這っていく以外には、食事を運んでもらい、新聞、テレビを見る気力もなく、唸りながらベッドで寝ていました。強い痛みは2日くらい続きました。」

 典型的な痛風発作の一例です。痛みが襲う場所は、足の親指の付け根がもっとも多く、痛風発作の約3分の2がそうです。くるぶしの関節、足の甲がこれに次ぎます。膝・手・指・肘関節などに起こることもありますが、頻度としてはかなり少なくなります。痛みが襲うのは初期には一か所の場合が多く、複数の箇所に現れることはまれです。痛みの程度は非常に強く、「子供が歩いても痛い」「風が吹いても痛い」などと表現されています。痛みのある部分は熱を持ち、赤く腫れます。激しい痛みは24時間以内にピークに達し放っておいても1~2週間以内にうそのように消失します。

痛みが消えても「「治った」わけではありません

 発作は放っておいても自然に消え、まるで何事もなかったようにケロッとしているのが痛風の特徴です。ここで「痛風が治った」と勘違いをする人がいますが、治ったのは関節炎であって、痛風そのものが治ったわけではありません。そのまま放置しておくと数か月後から2~3年後に必ず再発作が起こります。発作は繰り返すごとに間隔が短く、しかも次第に強く持続するようになり、また、複数の関節が侵されるようになります。何回か発作を経験した患者は、発作の起こる前兆を自覚できるようになると言います。もちろん適切な治療が行われれば、何回も発作を経験しなくてすみます。

 また、長年無治療で放置していた患者には、耳や足・手など色々な関節周囲の皮膚の内側に尿酸(正確には尿酸ナトリウム)が沈着し、粟粒大ないしクルミ大のしこり(痛風結節)がみられるようになります。これは痛風がかなり重症化しているしるしです。

 関節炎の発作はいくら強烈でも命に別条はありませんが、大事なことは、その奥に隠れて深く進行している、もっと重大な体の変化、腎障害や虚血性心疾患などが存在するということです。痛風発作は、自覚症状の現れる以前の他の症状が体の中に起こっていることを知らせてくれる「警報」です。この意味では内臓が侵される以前に関節炎が発症した人の方が幸せかもしれません。

00002.jpg同じ体質でも生活環境次第です

 体質的な要因が痛風発症の背景にあるのは事実です。しあkし痛風の発症に大きく影響するのは環境的な要因です。多くの場合、痛風素因のある人が環境的な要因を背負い込んだときに痛風を発症させているのです。

 例えば、フィリピン人を対象としたある調査によると、フィリピンに住むフィリピン人とアメリカに住移住したフィリピン人とを比較すると後者の方が高尿酸血症症例と痛風患者が圧倒的に多いのです。この理由を調べてみると、やはり、食生活習慣の違いによるものであることがわかりました。アメリカに移住したフィリピン人は、フィリピンに住むフィリピン人よりも、動物性タンパクや脂肪などの摂取量がはるかに多くなっていたのです。このようの、同じ民族、体質でも、生活環境が違えば痛風の発症率に大きな差が生じてきます。つまり環境的な要因は痛風発症のいわば「引き金」といっていいでしょう。

飽食、大酒、肥満が「引き金」に三拍子です

 環境的要因として、まず第一にあげられるのは高タンパクな食事、とりわけ動物性タンパク質や脂肪の摂りすぎです。痛風の原因が、体内の尿酸が増えすぎる高尿酸血症であることはすでに述べました。一般に高タンパクな食品、とくにもつ類は、体内で尿酸が出来るもとになるプリン体というものを多く含んでおり、血液中の尿酸値を上昇させます。また、脂質の摂り過ぎは尿酸の排泄を抑制し、やはり血液中の尿酸値の上昇につながります。

 第二には、アルコール飲料の飲み過ぎがあげられます。深酒をした翌朝痛風発作が起こりやすいことはよく知られています。アルコール飲料は体内で尿酸の合成を促進し、かつ尿中への排泄を抑制することで血液中の尿酸値を上昇させます。とくにビールは、それ自体がプリン体を大量に含んでおり、エネルギーも多く痛風患者や素因がある人にはあまりお勧め出来ません。

 痛風を引き起こす環境的な要因として、第三に肥満があげられます。痛風患者にはなぜか太った人が多いのです。そして、太った患者が痩せ始めると血液中の尿酸値は下がり、再び太りだすと尿酸値も上がりだすという傾向が見られます。

 このほか、過労、激しい運動、窮屈な靴をはいての歩き過ぎ、ストレス、絶食、排水、極端な足指の冷やし過ぎ、薬による急激な尿酸値の上昇・低下なども痛風発作のきっかけになることが知られています。

 以上、見てきたように、痛風にはその発症を促進するいくつかの「引き金」があります。痛風になりやすい人は要注意です。とはいえ、そう悲観することはありません。体質は変えられなくても、患者の意思で痛風になりやすい生活を変えることは出来ます。生活環境を改めれば、痛風の発症はある程度食い止めることが出来るのです。

00001.jpgかなりある民族差

 中年男性が痛風になりやすいことはわかりました。しかし、それでは中年男性ならば誰でも痛風の危険性があるのでしょうか?痛風になりやすい人となりにくい人がいるとすれば、一体どのような要因が痛風の発症に関係するのでしょうか。

 先に、日本人は欧米人に比べて痛風を発症しやすい体質を持っていると述べましたが、このように痛風素因は民族の違いによりかなり差があるのです。

 例えば、日本民族の源流の一つと言われるポリネシア人やミクロネシア人などの南太平洋諸島の住民(いわゆる黒潮民族)の痛風発症率は、ほかの民族に比べて、著しく高いことが知られています。種族によって多少の差はありますが、多い種族ではなんと成人男性100人中20人に痛風が見られたという、驚くべき事実も伝えられています。中国人など騎馬民族の人たちの痛風素因は黒潮民族よりもかなり低いと言われています。黒潮民族と騎馬民族との混血といわれる日本人の痛風素因は、南太平洋諸島の人々よりは低いが、欧米人や大陸系の民族より高いということになります。

 ちなみに、アメリカ人の痛風羅漢率は、人口1万人に対して40人、イギリス人の羅漢率は30人と報告されています。

痛風素因が遺伝する場合もあります

 さて、それでは一人一人を比べてみましょう。民族間で差があるように、個々の人間の間にも痛風になりやすい人となりにくい人がやはりいるようです。なりにくい人は多少無茶な生活をしても発症しません。ところが、なりやすい人の中には、生活に気を付けることで痛風発症を防げる人もいれば、どうしても治療が必要な人もいるなどその程度は様々です。この場合の「なりやすさ」とは、7痛風の原因である高尿酸血症になりやすいかどうか、また、すでに高尿酸血症である場合には関節炎や腎障害などの症状があらわれやすいかどうかという2つの意味があります。細かい痛風発症のメカニズムについてはあとで述べることにして、とりあえず、痛風の発症にはもって生まれた体質が影響するということを覚えておいてください。

 それでは、こういう体質は遺伝するのでしょうか。残念ながら痛風素因の遺伝に関しては、今のところ「確かに遺伝性のものは存在する」といった程度のことしかわかっていません。というのも、痛風の発症のメカニズム事態が複雑でまだよく解明されていないのと、遺伝関係の有無を知るためには患者の家系を何代にもわたってさかのぼり、調査し、一定の法則性を見出す必要があるため非常に困難が伴うからです。これから増えると思いますが今のところ、明らかに遺伝性素因が発症に関与したと思われる痛風患者は、全体の数パーセントから十数パーセントにすぎません。それでも、遺伝的に痛風になりやすい人がいることは確かですから、身内に痛風患者のいる男性は、そうでない人より痛風になる確率が高いと考え、定期的に血液中の尿酸値の検査を受けることをお勧めします。

00000.jpg壮年期の男性に発症しやすい

 痛風は、ふつう20歳代以上、特に40~50歳代の男性に多く発症し、この年代に発症する人だけで痛風発症者全体の約半数を占めます。当然、年齢別に見た患者数も壮年期以降に多いわけで、7割以上が40~60歳代に集中しています。成人の男性だけに限ってみれば、現在1000人あたり12~15人の痛風患者がいることになり、これはかなりの頻度と言えます。

 男女別では男性20~30人に対して女性は1人と圧倒的に男性が多く、まれに現れる女性患者の殆どは閉経期を過ぎてからの発症です。慢性関節リウマチ(いわゆるリウマチと呼ばれているもの)の患者に女性が多いのと対象的に、痛風は成人以上の男性の病気と言えるでしょう。

 これほど男女で差が生じる理由として、痛風の発症に性ホルモンが関係していることが推測されます。これまでの調査結果をみると、痛風の発症に決定的な影響力を持つ血液中の尿酸値が、男性に比べ女性が明らかに低いことがわかっています。これは、痛風の原因である高尿酸血症に、女性がなりにくいことを表しています。しかし性ホルモンにも種々あり、どのような働きでそうなるのか詳しいことはまだわかっていません。

 また、まれに20歳以下の男性、ごくまれに生理がある女性も痛風になることがあります。こういう患者は遺伝的素因があり、関節よりも先に腎臓が侵されている場合が多いので注意が必要です。

痛風の人は活動的で楽天的?

 いずれにしても、働き盛りの活動的で能力あふれる中年男性が、ある朝突然、足の親指の激しい痛みを訴えたときは、まずは痛風を疑ってみるべきです。

 多少は余談になりますが、一般に痛風患者は頭脳の働きが活発で、活動的、楽天的、かつ頑固な性格の持ち主が多いと言われています。悪い表現をすれば、落ち着きがなくせわしない性格ともいえるのです。ともあれ適度な血液中の尿酸値の上昇は、頭の回転を良くし、性格の上でも人を外交的、活動的にする働きがあるようです。歴史上の有名人に痛風であった人が多いというのは、そうした痛風の人の「優れて行動的」な性格に基づくのかもしれません。

 同時に、今日までそうした多くの事実が語り継がれているのも、彼らが痛風にかかったのがおそらく働き盛りの頃であったため、特に人々の印象に残ったのではないかと想像することが出来ます。現在でも、社会的地位の高い人に痛風患者が多いことは多くのお医者さんが認めています。

増えてきた日本人の痛風

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tufu.gif西洋では珍しくなかった痛風

 痛風は、西洋では古くからよく知られた病気でした。すでに紀元前より王族や政治家などの富裕層を中心に、かなりの頻度で存在していました。その為、かつては「帝王病」とも呼ばれていました。そして、痛風が美食、大酒、肥満と深い関係をもっていたことも、かなり正しく理解されていたようです。

 世界史に残る有名人でも、痛風であったことが明らかな人物は数多くいました。特にその中でも知られているのは、マケドニアの支配者アレキサンダー大王に始まり、芸術家のミケランジェロ、宗教改革の指導者ルター、哲学者のベーコン、フランス国王ルイ14世、詩人のゲーテ、そして科学者のニュートンやダーウィン、政治家のチャーチルなど枚挙にいとまがありません。

日本人の痛風患者は急増しています

 一方、西洋文明諸国とは対照的に、第二次世界大戦前までの日本人にとって痛風は極めてまれな病気でした。そのころは診断技術が未熟でしたのでリウマチやねん挫、フレグモーネ(化膿性疾患)などといった他の病気と取り違えていた可能性がありますが、いずれにしても絶対数が少なかったのです。しかし、昭和30年代の後半から、痛風患者は増加の一途をたどり、現在では、日本の痛風患者は約50~60万人(人口1000人当たり約4~5人の割合)にのぼるとみられています。

 このように日本で痛風患者が急増している原因としては、診断技術が向上したこともありますが、もともと日本人が欧米人より強い痛風素因(痛風を発症しやすい体質)を持っていたことに加え、戦後の日本では、米、麦、イモ類など含水炭素を中心とした低タンパク、低エネルギーの食生活が一般的だったため、痛風患者はほとんど存在しませんでした。ところが、昭和30年以降、動物性タンパク質や脂肪、アルコール飲料などの摂取量が増加するにつれて、日本人の痛風患者は急増し、有病率(人口に占める患者数の割合)ではすでに欧米を上回っています。

誤解や偏見を除いて正しい理解を

 痛風患者がこれほど増えているにもかかわらず、依然として日本人の痛風に対する理解は十分ではありません。おもに足の親指の付け根などに激痛をもたらす痛風発作(痛風性関節炎発作)の印象ばかりがあまりに強烈なためでしょうか、痛風を単なる関節炎と考え、それを引き起こした原因、ほかの症状に対する診断、特に治療をおろそかにしている例があとを絶ちません。

 痛風は、関節炎のほかにも腎障害(痛風腎)、腎結石、高血圧症、高脂血症、虚血性心疾患、糖尿病、肥満症など色々な病気を高率に含む全身病です。そしてこの原因となっているのは、体内の尿酸が多くなりすぎる高尿酸血症という病気です。これに対する適切な治療を早い時期から、しかも根気よく続ける必要があります。